OpenOffice.org 日本語版 レビュー

-- オープンソースの切り札,制限なしで無料で使える高機能オフィスツール --



可知 豊 ( http://www.catch.jp/ )

CopyRight 2003 Yutaka Kachi

Ver1.00

Last update 2003-01-17  

この解説は、「日経ネットナビ 9月号」(日経BP社 7月29日発売)の記事を大幅に加筆訂正したものです。
公開について快く理解してくれた日経ネットナビ編集部に感謝。

ワープロや表計算ソフトなどのオフィスツールは、パソコンに欠かせないツールだ。Microsoft Officeを代表に定番商品も多い。 そこに、新しいOfficeツールが登場した。それがOpenOffice.org(以下OOo)だ。ワープロ・表計算・プレゼンテーションといった5つのソフトがセットになっている。後ほど詳しく解説するが、どれも高機能で使いやすいソフトに仕上がっている。

この記事では、Ver1.0.1について説明しています。内容については、アップデートしていく予定です。

 

特徴:オープンソースで開発・Microsoft Officeと高い互換性

 OOoは、Linuxと同じくオープンソースで開発されており、無料で自由に入手できる。
 インターネットを中心に配布されているため、マニュアルは付属しない。サポートはユーザー会によってボランティアで行われている。マニュアルやサポートが付属したパッケージ版は、ソースネクストより発売中だ。
 Microsoft Officeは、勝手にコピーできないし、PowerPointを含むパッケージはかなり値段も高い。
 OOoは、完璧なMsクローンではないが、Msのファイルを読み書きできる。会社や家族でいくらコピーしても無料だ。自作パソコンなどに入れておけば、ちょっとした修正やビュアーに便利だ。
 現在のVer1.0では少しインストールに手間がかかる。まだまだ欠点もあるが、オープンソースですぐに完成度も上がるだろう。その時も無料で入手できる。今後が楽しみなソフトだ。

 

OpenOffice.orgとMicrosoft Officeとの比較

OpenOffice.org Writer
Microsoft Office Word


Writerで作成した文書を、Word XPで開いた。
文章は正常に表示されている。図形描画機能で描いた図もそのまま表示される。
行間の幅が異なり、レイアウトが少し変わる。

 

OpenOffice.org Calc
Microsoft Office Excel
Calcで作ったファイルを、Excel XPで開いた。
表のデータ・数式・書式は、まったく同じ。
グラフの背景だけが変わってしまったが、他の部分では違いが見られない。

 

Write:高機能なワープロ・見出し設定など操作性も上々

[良いところ] 効率良く書式設定できる・差込印刷のデータ管理
[ダメなところ] 日本語禁則処理が動かない・罫線の操作性に難あり

 Writerは、軽快に動作する高機能なワープロソフトである。通常の文書作成であれば、問題なく使用できる。Microsoft Wordと操作性も似ているので、これまでワープロを使ってきたユーザーなら簡単に使いこなせるだろう。
 書式設定をを効率よく進めるため、スタイリストウィンドウを装備しており、選択中の文章に、すばやく見出しなどを設定できる。Writerのみならず、OpenOffice.org全般で使える。

高度な差込データ管理・図形描画機能を備える

 差込印刷のデータ管理のため、データソース機能を備えている。これは、簡単なデータベース機能で、表計算やデータベースから取り込んだデータを絞り込み・並び替えが自由にできる。
 図形描画機能の他に、Drawというドローツールを装備しており、Writerや他のツールから自由に呼び出せる。単体で、図形データをファイルに保存する事も可能だ。高度な機能を持っているので、ビジネス用のイラストを描く時などに力を発揮するだろう。
 ただし、いくつかの欠点がある。まず日本語の禁則処理が動かない。罫線の操作性は少し問題がある。ドラッグで罫線を引けないのだ。日本では、よく使う機能なので、今後に期待したい。また、クリップアートは、ほとんど付属していない。インターネットでお気に入りを集めておこう。

 

スタイリングウィンドウで、すばやく書式設定できる。
ウィンドウから書式を選ぶと、フォント・サイズ・色などが適用される。あらかじめ、よく使う見出しが登録されているので、それを選択するだけでいい。

簡単な図形描画機能の他、Drawというドローツールを装備している。3D-CG機能を持ち、複雑なイラストも楽々と描ける。Ms Officeと異なり、単体で保存も可能。

さらに、動的コネクタを利用すると、他の図形の移動に合わせて、接続した線が移動する。ビジネス用のブロック図を描く際なども、効率よく作業を進められる。

 

Calc:日常的に使える表計算ソフト・Excelとの高い互換性

[良いところ] 操作/数式など高い互換性・WriterとDrawと連係可能
[ダメなところ]日本語名タブは不可・日付の扱いに問題有り

 Calcは、標準的な機能を備えた表計算ソフトである。Excelと同等の機能を備えており、もちろんファイルも読み書き可能。数式や関数にも互換性がある。エラー処理や複雑な計算をする特殊な関数をのぞけば、計算結果も当然同じになる。
 セルの内容をコピーする操作や、数式の入力方法も同じなので、今までと同じようにワークシートを作れる。グラフの作成も同様だ。Excelの表をちょっと見たい時や、電卓代わりに計算したい時など、日常的に使うなら全く問題がないと言えるだろう。

電卓代わりに使えるが、細かな問題点もある

 ただし、実際に使ってみていくつかの問題点もあった。
 たとえば、ドラッグで移動しようとしても、1だけのセルは移動できなかった。また日付を入力しても、文字として認識されてしまった。
 さらに、タブの表記が表1・表2となっているが、これを変更しようとすると英語名しか利用できない。また保存によって、タブの名前が変わってしまうこともあった。
 とはいえ、次の画面でもわかるように、操作の点ではExcelと同じように利用できる。WriterやImpressから呼び出せるし、Drawを呼び出す事もできるなど、他のソフトの連係度も高い。
 問題点は、早急に改善して欲しいが、オープンソースならそれが可能だ。素早く改善されれば、さらに使いやすくソフトなるだろう。

バージョン1.0では、日付の扱いに問題があった。米国式に「月/日/年」と入れないと日付と認識してくれないのだ。
「平成14年」も認識されない。書式を変更しても、西暦から平成などに切り替えられないのだ。

 

オートフォーマットで表を書式設定する。
登録されているスタイルから選ぶだけで完成。
この操作もExcelと同じになっている。
オリジナルの書式を登録することもできる。

オートフォーマットグラフで、表からグラフを作成する。画面の指示に従って必要な情報を入力していくだけで、グラフが完成する

 

Impresss :高価なOfficeがなくてもプレゼン資料が作れる

[良いところ] スピーディな資料作成・PowerPointと同じ操作
[ダメなところ]テンプレートは要追加・特殊効果は互換性なし

 Ms OfficeでPowerPointが付属するパッケージは、約5万6000円とかなり価格が高い。そこでお薦めなのが、これ。OpenOffice.orgに付属するプレゼンテーションソフトImpressだ。

デザインされた資料をテンプレートで作成

 Impressには、見栄のするテンプレートを使うことで、手軽な操作でプレゼンテーションを作成できる。会議の資料を作るくらいなら、ワープロよりも簡単だ。デザインされたテンプレートが用意されているので、これに必要な情報を入力するだけで、プレゼン資料が作成できる。
 ただし、このテンプレートは、インターネットから別途入手する必要がある。また、クリップアートも付属していないので、イラストを入れて資料に彩りを添えたい場合に不便だ。最初からセットになっていて欲しいところだ。
 なおテンプレートは、ユーザー会サイトの「File Download テンプレート集」から入手できる。

 

PowerPointと同じ操作でプレゼンを作成できる。特殊効果をつけられるが、PowerPointと互換性はない。Calcで作成したグラフをImpressに読み込んだ。OLEに対応しているので、他のツールの機能を自由に利用できる。

 

OpenOffice.orgとMicrosoft Officeはココが違う

ソフト名OpenOffice.org 1.0 Microsoft Office XP Standard
価格無料実売約5万6000円 (Amazon.co.jp調べ)
対応OSWindows, Linux, FreeBSD,
Solaris, MacOS X(開発中)
Windows, MacOS X(Office v.X)
開発元OpenOffice.orgMicrosoft
代表的な機能Writer(ワープロ)
Calc(表計算)
Impress(プレゼン)
Draw(ドロー)
Math(数式エディタ)
Word XP
Excel XP
PowerPoint XP
OutLook XP
付属品 

マニュアル
クリップアート
学習ソフト

 

インストールと設定のポイント

インストールは、ダウンロードしたファイルをダブルクリックするだけで終了する。
ただし、現在配布されているVer1.0では、インストールの後でいくつかの設定が必要だ。これをしないと、文字が化けるなどの問題が発生する。
まず、フォントの置き換え設定を行う事。それから、CalcとImpressでは、テンプレートの登録を行う。
また、Widows95では日本語が入力できず、実用には使えない。
これらの設定方法をはじめ、ダウンロード先など必要な情報が、インターネットのユーザー会サイトに詳しく掲載されている。また、設定を自動的に行うツールの準備も進んでいる。

 

改訂

2003-01-17:公開