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さらばMSオフィス Part2
MSオフィス互換テクニック徹底解説



可知 豊 ( http://www.catch.jp/ )

CopyRight 2003-2004 Yutaka Kachi

Ver1.00

Last update 2004-01-01  

この記事は、アスキーPC Explorer 2003年9月号に掲載されたもののうち、
私の担当分だった記事を加筆訂正したものです。
OpenOffice.org 1.1RC3にもとづいて、執筆しています。

MSオフィスの強力なライバルが無料のオフィス OpenOffice.orgだ!

ワープロソフトや表計算ソフトは、ビジネスに欠かせないツールだが、その代表選手であるMicroSoft Office(以下、MSオフィス)は約5万円もする。そこで最近ガゼン注目を集めている のが無料で使えるオフィス「OpenOffice.org」だ。

MSオフィスと高い互換性を持つOpenOffice.org

「OpenOffice.org」(オープンオフィス ドット オルグ。以下、OpenOffice)は、誰でも自由に無料で使えて、MSオフィスと高いファイル互換性を持った「オープンソース」なオフィスソフトだ。 次 表を見ていただければおわかりになると思うが、ワープロソフトや表計算ソフトなどが用意されており、まさにMSオフィスの代替として使える。もちろん 100パーセント互換ではないため、完全にMSオフィスの代わりになるわけではなく、相互にファイルをやりとりした際にトラブルが起こることもある。
 そこで、今回の特集では、MSオフィスで作成したファイルをOpenOfficeで開く際に起こりがちなトラブルとその解消方法を解説していく。(注: ここには掲載していません)

 Word・Excel互換ソフトの OpenOffice.org 機能比較


OpenOffice.org 1.1.0
Microsoft Office XP Standard
ワー プロ
Writer
Word
表計算
Calc   
Excel
プ レゼン
Impress     
PowerPoint
ドロー
Draw   
図形描画機能
(単独でファイルに保存できない)
ス ケジューラ
な し   
OutLook
データベース
データソース*1   
なし*2
HTML エディタ
HTML エディタ   
な し*3
数式エディタ
あり
あり
対 応OS
Windows98/Me/2000/XP
Linux, Solaris, FreeBSD, Mac OS/X
Windows98/Me/2000/XP
ライセンス数
無制限    
2 *4
電 話サポート
な し *5
4 回まで無料
Webでのサ ポート
ユーザー会によりボランティアで行われている
マイクロソフトのWebサイトで行われている
バ グ対応
ユー ザーからの報告にもとづき、
マイナーバージョンアップが
約3ヶ月に一度行われる
マ イクロソフトからパッチや
サービスパックが提供される
価格
無料   
実売価格 約5万円
バー ジョンアップ
無 料   
有 料
(XP Standardバージョンアップは、
 約2万5000円)
*1:データベース接続機能
*2:Professional/Professional Special Edition/Developer/Professional with FrontPageには、「Access」が付属
*3:Professional Special Edition/Developer/Professional with FrontPageには、「FrontPage」が付属
*4:2台目はノートPCに限る
*5:2003年末に、サンによる電話サポートが発表された


オープンソースだから無料で使え、改造・販売も自由

 さて、この「オープンソース」こそが、OpenOfficeの大きな特徴だ。
 「オープンソース」とは、ソフトウェアの設計図である「ソースコード」を誰でも自由に無料で利用・改造できるようにすることで、多くの人による共同開発 を促進する手法だ。フリーソフトも無料で使 えるものだが、ソースコードを公開していないという点などで異なる(次表)。
「ソースコード」が誰でも自由に利用できるので、その開発・サポートに誰でも参加できる。より品質の高いソフトを求める優れた人材が、世界中からインター ネットを介して開発に参加して、非常に高品質なソフトウェアができあがるのだ。なおサポートは、インターネットを利用して、ボランティアを中心に行われる のが一般的だ。
 ただし、開発やサポートは、必ずしも無料で手伝う必要はない。ここから、いろいろなビジネスのバリェーションが可能になる。
 本誌の特集自体が、有料サポートの一例と言えるだろう。自作用パーツや周辺装置・中古パソコンとセットで販売したり、パソコン教室で OpenOfficeを配布する場合もある。また実際に買う人がいるかどうか別だが、自分でダウンロードしたOpenOfficeをそのままCD-Rに焼 いて販売してもOKなのだ。

オープンソース・ フリーソフト・市販ソフトを比べてみると 

オープンソース

  • 誰でも無料で使える
  • サポートはボランティア
  • 自由に再配布できる
  • ソースコードが公開されて、誰が改良してもいい
  • 開発の中心は、開発コミュニティ

フリーソフト

  • 無料で使える
  • サポートはボランティア
  • 無断転載禁止となっている場合が多い
  • ソースコードは非公開
  • 公開されていても、自由に改良できない場合が多い
  • 開発は中心は、個人

市販ソフト

  • 有料
  • サポートあり
  • 配布やインストール台数がライセンスによって制限される
  • ソースコードは非公開
  • 開発の中心は、企業


[補足情報]

OpenOffice.org以外のオープンソース
 OpenOffice以外にも、ブラウザのMozillaやデータベースMySQLなど多数のソフトウェアがオープンソースになっている。Appleの Mac OS Xは、FreeBSDというオープンソースなOSのエンジン部分(カーネル)をベースにして、使いやすいウィンドウシステムを独自に組み合わせたものだ。 Linux(リナックス)というOSで、Windows自体を置き換えてしまおうという動きも活発になりつつある。

StarSuiteとStarOffice
 サン・マイクロシステムズ(以下、サン)が販売しているStarSuiteは、OpenOfficeのソースコードから作ったオフィスソフトに、テンプ レートやクリップアート・日本語フォント・、電話サポートをセットにしたものだ。
 海外では、StarOfficeという名前で販売されている。日本での製品名が「StarSuite」なのは、NECが同社のグループウェア、アプリ ケーションサーバー製品の名称として「StarOffice」を商標登録しているため。現在販売されているStarSuite7.0は、 OpenOffice.org1.1と同等の機能を持っている。

教育機関向けStarSuite
 このStarSuiteは、教育機関向けには無償で提供されている。
http: //jp.サン.com/company/Press/release/2003/0605_2.html




OpenOffice.org Q&A

Q.最初は誰が開発したの?

A.ドイツのソフトメーカーが開発したStarOfficeがそ の起源。

 StarOfficeは、元々ドイツのソフトメーカーStarDivision社で開発・販売されていた統合オフィスソフ ト。日本語版が発売されなかったので、日本での知名度はいまいちだが、欧米を中心に400万人以上の ユーザーがいたという。1999年にそれをサンが買収して、オープンソース化した。2002年5月に、OpenOffice.org 1.0として正式リリース。同じソースコードからStarOffice 6.0が作られて(日本ではStarSuite6.0)、クリップアートや電話サポートとセットで販売されている。

starsuite7OpenOffice1.1と同じソースコー ドから 作られたStarSuite7。
実売価格は1万円前後。サポートが必要なら、こちらがお薦め。
統合オフィスツールStarSuite 7

Q.日本語版は日本ユーザー会が開発してるの?

A.ドイツの開発チームが行っている

 OpenOfficeは、日本語版だけでなくフランス語やドイツ語、中国語、韓国語、アラビア語など、多くの言語に対応して いるのが特徴だ。そのため、英語版だけでなく、すべての言語版が、ドイツの開発チームによって一括して作られている。
 日本ユーザー会は、日本語版の開発作業を行っている訳ではないが、日本語版の品質向上のために、インターネット経由で開発チームにフィードバックした り、情報交換・サポートを行っている。

http://ja.openoffice.org/OpenOffice.org 日本ユーザー会
日本語版の品質向上・情報交換・サポートを行っている。
http://ja.openoffice.org/

Q.サポートはあるの?

A.ボランティアで行われている

 電話サポートやマニュアルはないが、インターネットで、日本ユーザー会の有志によってサポートが行われている。掲示板やメー リングリストで、質問にも答えてもらえる。最近は、解説書も増えてきている。
 ただ、自己責任で使うのが基本なので、まずは自分で調べてみよう。操作に慣れてきたら、他の人の質問にも答えてあげよう。
2003年末に、サンによる電話サポートが発表された

Q.今は誰が作っているの

A.OpenOffice.orgという開発コミュニティが作っ ている

 OpenOfficeは、OpenOffice.org(http://openoffice.org/)という同じ名前の 開発コミュニティによって開発されている。サンは、この開発コミュニティのメインスポンサー。インターネットを介して、世界中のボランティアが開発に参加 している。

Q.もうMSオフィスがなくてもOK?

A.100%互換ではない

 OpenOfficeは、MSオフィスとの100%互換を目指したソフトウェアではない。ファイルの互換性は高いが、操作は 違っている。とはいえ、各ツールの使い方が共通化されており、こちらのほうがすっきりしている。MSオフィスのライトユーザーにはお薦めだ。
 大きく違っているのは、表計算のマクロBasicと、データベースの接続機能だ。特に、マクロBasicは、プログラムの互換性がないのでプログラムを 作り直す必要がある。
 移行に際しては、MSオフィスをすぐに削除しないで、正しくファイルが変換されているか確認しながら使うといいだろう。


OpenOffice.orgのメリット

  • 無料
  • 誰でも自由に使える。配布も自由
  • 特定の企業にしばられない
  • 頻繁にバージョンアップされる
  • MSオフィスとファイル互換性が高い
  • 中国語や韓国語対応など国際化
  • マルチプラットフォーム

OpenOffice.orgのデメリット

  • サポートはボランティアがベース
  • クリップアート/テンプレートが少ない
  • 新しいソフトなので、ノウハウがまだ揃っていない
  • 特にマクロBasicとデータベース接続
  • ローカル対応はいまいち
  • たとえば、マウスで罫線を描く機能がない


日本語ソフトとして実用的になった
OpenOffice.org 1.1ついに登場

 OpenOffice.orgがいよいよ実用的になった。新バージョンの登場で、ややこしい初期設定や禁則処理が働かないといった重大な欠点が解消され た。ここでは、OpenOffice 1.1の機能を、CalcとWriterを中心に紹介する。

Excelに匹敵する表計算ソフト Calc

 表計算ソフト「Calc」は、入力したデータから合計や平均など計算式に合わせて計算するツールだ。見てのとおり多彩な表現 力を持っている。作成した表 やグラフは、コピー&貼り付けで、WriterやImpressに利用できる。多くの機能が統合されているOpenOfficeならではの使い方 だ。Excelとの互換性も高いが、マクロBasicは互換性がないので、これは作り直す必要がある。このバージョンから、操作をマクロに自動記録する機 能がついたので、それを利用するといいだろう。

calc

機能1:計算式を簡単に組み立てられる
 計算式は、関数ウィザードで簡単に組み立てられる。Calcには、Excel同様に多くの関数が装備されている。基本的な関数は同じなので、迷わず使え るだろう。

機能2:多彩な表現が可能
 オートフォーマットで、簡単に表をレイアウトできる。縦書きを含めて多彩な表現力を持っている。ただし、マウスドラッグで枠線を引いたり、斜めの線は引 けない。

機能3:グラフウィザードでグラフ作成
 グラフの作成は、グラフウィザードで簡単にできる。3Dグラフなど、多彩な表現が可能だ。作成したグラフを、WriterやImpressに貼り付ける こともできる。

機能4:Drawで描いた図形や3Dグラフィック
 すべての機能が統合されているOpenOfficeでは、Drawで描いた図形を簡単に利用できる。
Drawには、簡単な3D-CG機能も搭載されている。

機能5:データベース接続機能「データソース」
 Calcは、最大行数=32000行と、大きなデータはあつかえない。その代わりにデータベースと接続する「データソース」機能が用意されている。クエ リーを使って、複数のデータベースファイルから、特定のデータを集めることができる。
 巨大なExcelのデータはCSV形式で保存しておいて、それを「データソース」で絞り込むことでCalcに読み込める。そもそも、32000行を越え るような大きなデータは、表計算ソフトではなく、データベースで管理するのが便利だろう。


日本語機能が強化されたワープロソフト Writer

 Writerは、一枚モノのチラシから、長文の論文まで多彩な文書を作成できるワープロソフトだ。見てのとおり、多彩な表現 力を持っている。文書をホームページのHTMLに変換することもできる。
 長文作成には、「ナビゲータ」機能と「スタイリスト」機能が便利だ。「ナビゲータ」は、著聞のアウトラインを並び替えたり、文書に散らばった図や表など を一覧する機能だ。「スタイリスト」は、見出しなど共通の要素のレイアウトを一括して変更する機能だ。


writer

機能1:多彩な表現が可能
 箇条書き・段組・ドロップギャップなど複雑なレイアウトにも対応している。
 テキストボックスの文字は、「フォントワーク」機能で加工できる。複数のテキストボックスを使って、文章を流し込むこともできる。

機能2:Calcの機能をダブルクリックで呼び出す
 Calcで作成した表をコピー&貼り付けした場合、表をダブルクリックすると自動的に、Calcの機能に切り替わる。簡単な作表なら、 Writerだけで作ることもできる。こちらも、マウスドラッグで枠線を引いたり、斜めの線は引けない。

機能3:Drawで描いた図形や3Dグラフィック
 Wordと同じような図形描画機能も持っているが、さらに高度な機能を備えたDrawを利用できる。図のような簡単な3D-CGや、ブロック図に合わせ て移動するコネクタなどの機能を持っている。

機能4:縦書きや縦中横にも対応
 ページ全体を縦書きにしたり、テキストボックスを使って、そこだけを縦書きにできる。縦書き文章中に半角英数字があった場合、そこだけ縦中横機能で回転 させられる。

機能5:「データソース」と連係する差込印刷
 差込印刷には、Calcと共通の「データソース」機能を利用する。住所録をCalcやデータベースで作っておいて、そこから特定の条件の住所の絞り込 み・並び替えを行って、Writerで差込印刷する。


[補足情報]

OpenOffice.orgの操作
 OpenOfficeは、MSオフィスと操作がよく似ている部分もあるが完全互換ではない。特に、MSオフィスと比べて、次のように、各ツールバーの役 割が明確になっている。 ファンクションバー(上段):すべてのツールの共通機能、オブジェクトバー(中段)=選択中のパーツについての機能、標準ツール バー(左端):使用中のツールの機能

ユーザー会のOOoWiki FAQ -> 操 作の特徴

OpenOffice.org1.1の新機能の特徴

面倒な初期設定が不要になった

 これまでのバージョンでは、面倒な初期設定を行わないと日本語が化けてしまった。1.1ではこの問題が解消され、インストー ルするだけで実用的に利用できるようになった。文書ドキュメントのフォント設定は最初から"MS P 明朝"になっている。
 ただし、テンプレートやクリップアートは十分ではないので、簡易追加設定ツールを適用しよう。追加データのほかに、ツールバーにExcelと同じボタン をいくつか追加してくれる。

簡易追加設定ツール(通称 ER)は、次のサイトで配布されている
http://www.shirotori.gr.jp/~katuyou/jaorigin/er.html

MSオフィスとの互換性がアップした

 Calcでは、従来は日付データがシリアル値に化けてしまったり、日本語シート名が使えないといった問題が解消されている。 グラフの見栄えやマクロBasicなど、違いはわずかだ。Writerでは、複雑なレイアウトでも崩れることが少なくなったが、均等割付は再現されない。 詳しいテクニックは24pで解説する(掲載していません)。

PDF・Flash形式で書き出せる

 データを渡したい人がOpenOfficeを持っていないときに便利なのが、ワープロ文書と表計算データをPDF形式に、プ レゼンテーションとドロー データをFlash形式に変換する機能だ。どちらもインターネットの標準ツールとして普及しているので、OpenOfficeを持っていない人も、ブラウ ザのプラグインで表示できる。

acrobat

禁則処理に対応し日本語表示がキレイに

 新バージョンでは、禁則処理が正常に働くようになった。句読点や長音のぶら下がり、英単語の追い出しがきちんと動作するの で、日本語表示がキレイに見える。writerだけでなく、ImpressやDrawのテキストボックスでも有効だ。
 ただし旧バージョンで作った文書は、レイアウトが変わってしまう可能性があるので、チェックしておこう。

wordrap

 行頭に句読点や長音が来る場合、それを行末にぶら下げたり、英単語を途中で折り返さない。
 当たり前の機能だが、これでようやく実用的に。

マクロ機能やアクセシビリティ

 新バージョンでは、マクロを作成する環境が充実し、操作をマクロに自動記録する機能が搭載された。また、マクロBasicの 日本語オンラインヘルプも収録された。また、ハンディキャップのあるユーザーをサポートするためのアクセシビリティ機能も多数搭載されている。これは、オ ンラインヘルプで"アクセシビリティ"を検索するとチェックできる。

そのほかの新機能・変更点

  • 行数、文字数を指定した文書を作成可能
  • Pocket Word/Excelファイルに対応(英語のみ)
  • 表計算のシート名に日本語が使える
  • プレゼンテーション用テンプレートを添付
  • アンインストールは、コントロールパネルから

1.1.0での制限事項

  • 一部の古い日本語フォントは使用できない
  • シート名に括弧などの記号が使用できない
  • 原稿フォーマットのPDF形式で文字が重なる



改訂

2004-01-01:公開