本物のファンは自炊しない ~ 東野圭吾氏、弘兼憲史氏など著名作家・漫画家が、スキャン代行業者を提訴

このブログでは、ライセンスと電子流通の話に注目しています。なぜなら、自由なコンテンツ利用は、複製・流通のコストがほとんどゼロになっていることが前提になっているからです。

一方、自分が所有する本をスキャンして電子化する「自炊」は、ちょっと毛色が違う話題です。流通というよりも私的な複製の手法的な問題だからです。

さて、東野圭吾氏、弘兼憲史氏など著名作家・マンガ家が、スキャン代行業者を提訴したそうです。ネット上のニュースしか読んでいないのですが、いちおうリンクをまとめておくと。

まず、こういう話があって。

それから、こうなりました。

これについての反応。

感想:

以前ライターだったころの個人的な体験では、裁断される分の書籍の印税ももらっていました。なぜなら、印税は販売数ではなく印刷数に応じて支払われたから。だから、裁断されても作者は、金がもらえるはずです。ま、今回の原告の皆さんは、チョー人気作家ですから格が違いますが。また最近は、印刷数がライターに報告されて、出庫されるた分だけ印税が支払われる、という出版社もあるのですが。

自炊による作家の金銭的な被害は、あると思います。それは、以前に紙の書籍を買った人が、電子書籍という別バージョンを再購入してくれないこと。つまり、今回の提訴は、おれの商売を邪魔するなってことだよな。

本物のファンは、両方買うでしょ。音楽なら、アナログレコードを買って、CDを買う。映像なら、ビデオを買って、DVDを買って、コレクターボックスを買って、Blue-rayを買う。各パッケージを視聴用と展示用と保存用に3つ買う。中身のストーリや文章だけを買うんじゃないよ。ただ、今までは書籍は、そういうコレクターズアイテム的な要素は少なかったけどね。それに、今後は、視聴用と展示用と保存用と電子化用に4つ買うようになるのかもしれない。

著作権者は、出版社に対して出版契約を設定します。書籍の購入者は、著作権者から利用許諾を受けていません。だから、書籍の購入者は、私的利用目的以外で複製できません。

今回の提訴は、すべてのスキャン代行業者を訴えていません。だから、サービスメニューの組み方で、サービスが生き残る余地はあるんじゃないかな。だって、ニーズはあるから。私的利用の許諾プロセスや裁断本の処理方法を厳密化するとか、業界団体で相互チェックするとか。

私には、紙で手元に残しておきたい本があります。私は本物のファンとは言えないでしょう。電子化したい本もたくさんあります。今のところやってないけれど、そろそろ自炊したい。

PS.
質問状がでた段階で、ただのにっきに書かれていた内容が的確かと。