公益社団法人著作権情報センター(CRIC)というのがありまして、”次世代を担う著作権法制の研究者・実務者の研究を奨励し、著作権法制の適切な発展を期することを目的として”、2年ごとに著作権・著作隣接権論文を募集しています。その第9回の選考結果が発表されて、「OSSライセンスとは-著作権法を権原とした解釈」という論文が佳作入選しました。
書いたのは、NEC ソフトウェア技術統括本部 OSS推進センターの姉崎 章博さん。 @ITで「企業技術者のためのOSSライセンス入門」を掲載するほか、オープンソースカンファレンスなどで、OSSライセンスの解説セミナーを多数行うなど、OSSライセンスの理解と普及のために活躍してきた方です。
その論文要旨が、下記に公開されています。
- 「OSSライセンスとは~著作権法を権原とした解釈~」論文要旨 【PDF】
- OSSライセンス・コンプライアンス コンサルティング・サービス | NEC
- 公益社団法人著作権情報センター CRIC
- 「第9回著作権・著作隣接権論文募集」入賞論文決まる 【PDF】
この要旨によると、本論文では、
本邦におけるOSS ライセンスの解説は、契約法を権原とした解釈が多い、一方、OSS ライセンスの正しい理解を阻害している一面があり、それによる弊害も見受けられる。
という問題意識から、GPLやBSDライセンスなど各種オープンソースライセンスを解説し、オープンソースライセンスが契約ではなく著作権をベースにしたものであることを示しています。さらに、「GPLの感染性」と呼ばれる表現が不適切であること、ソフトウェア開発者への著作権法の教育の必要性などを訴えているそうです。
たしかに、法曹界に向けて、オープンソースとライセンスの理解を進めるためには、こういった論文が重要かも知れませんね。まだ論文の実物は公開されていないようですが、法務的にテクニカルな内容のようで、ちょっと読んでみたくなりました。
とくに、二次的著作物というものが、これまでの著作権法の解釈からグレーらしいというのを最近知りまして、たとえば「二次創作同人”小説”」が合法って本当? | 赤松健の連絡帳と言う具合に二次創作同人マンガはアウトだけど二次創作同人小説だとOKみたいな話があって、そのあたりをオープンソースライセンスだとどう考えるかとか、ちょいと気になっているのです。
姉崎さん>>
入選おめでとうございます。素晴らしい成果ですね。この論文が、オープンソースによる産業育成などに良い影響をいっそう与えていくことを期待しています。
ありがとう。>可知さん
取りいそぎ。
「二次的著作物」と「二次創作」は別物と考えた方が良いようです。
私の論文では「二次創作」については全く触れていません。
過去の論文集に「二次創作」について、定義から特定を試みていたものがあったと思います。
ご存じでしょうが、著作権法は、「アイディア」を保護しません。
「Q. アイデアは著作物ですか?
A.著作物とは他人が知ることができるように外部に表現されたものをいいます。ですから、アイデア自体は著作物ではありません。ただし、アイデアを解説した解説書は著作物となります。」
http://www.cric.or.jp/qa/hajime/hajime1.html
著作権法は、あるアイディアに対して、いろいろな表現が創作されることを期待し、それが文化の発展に繋がると考えているもののようです。
プログラムも「この法律による保護は、その著作物を作成するために用いるプログラム言語、規約及び解法に及ばない。」著作権法第十条第三項
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S45/S45HO048.html
解法がアルゴリズムや機能に当たる「プログラムにおける電子計算機に対する指令の組合せの方法」です。
ある人がアイディアだけを利用した「二次創作」だと言っても、原著作者は「二次的著作物」だと主張するかもしれません。それは第三者が判断できるものではないので、著作権侵害は「親告罪」なわけです。
具体的な事例で裁判で当事者同士で決着つけるしか結論は出ないと思います。