エンジニアのための契約勉強会 – オープンソースライセンス編まとめ

co-edo_20150624

2015年6月24日、東京・コワーキングスペース茅場町 Co-Edoで、「エンジニアのための法律勉強会 #5『OSSのライセンスと、コンテンツやソースコードの著作権』 – Co-Edo Developers」が開催されました。この勉強会は、IT系の契約や法律・判例についての勉強会で、弁護士の野島梨恵さん(東京山王法律事務所)に解説いただいています。これまでに「SQLインジェクション対策もれの責任を開発会社に問う判決」などを取り上げてきました。

野島さんは、ふだん弁護士として企業法務系とか係争とかを扱っているそうです。必ずしも情報技術に詳しいわけではありませんが、毎回、法律家ならこう考えるという話は、大変勉強になります。

これまでの勉強会の内容は、小山さんのこの記事にまとまっています。

さて、5回目となる今回のテーマは、オープンソースライセンス。私も講師のひとりとして、いつものオープンソースライセンスと著作権あたりの概略を説明して、そこに野島さんが法律的な解説を加えるという形式になりました。

続きを読む


登壇します!エンジニアのための法律勉強会 #5『OSSのライセンスと、コンテンツやソースコードの著作権』

_

6月24日(水)に、下記の勉強会に登壇することになりました。
今回は、弁護士の野島 梨恵氏(東京山王法律事務所)といっしょです。

今回は、せっかく法律家の方も参加してくれるので、法律家から見たライセンスとは何ぞというところを聞いてみたいと思います。

皆さんのお申し込みをお待ちしております。


引用のルール

When all is lost

※2015-02-22:文化庁のWebページの利用ルールを再確認して、引用のルールとして本ページに転載して大幅に書き直し。

引用のルールについて解説する記事が増えてきました。

論文とか特定のコンテンツだけでなく、あらゆるコンテンツに引用のルールが適用されます。

なので、コンテンツを作る人は、きっちり押えておく必要があるでしょう。

ここでは、文化庁のWebサイトにある「文化庁 | 著作権 | 著作権制度に関する情報 | 著作権制度の解説資料 | 著作権制度の概要 | 著作物が自由に使える場合」から、(注5)引用における注意事項をコピーしておきます(これは、自由利用マークのコピーOKが付いているので、営利目的でなければコピーできまます)。

(注5)引用における注意事項
他人の著作物を自分の著作物の中に取り込む場合,すなわち引用を行う場合,一般的には,以下の事項に注意しなければなりません。
(1)他人の著作物を引用する必然性があること。
(2)かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが区別されていること。
(3)自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)。
(4)出所の明示がなされていること。(第48条)
(参照:最判昭和55年3月28日 「パロディー事件」)

これが引用のルール。

他の人の著作物を許可なく引用として利用するには、上記のルールに従う必要があります。週刊誌などの記事を丸パクリして転載するのは引用ではない。

文化庁にも、いくつか解説があります。

ほかにも、たくさん解説があります。

あ、英語だと“quotation”というんですね。だから、引用はクオーテーションマークで囲むんですな。


オープンソースライセンスの講義を慶応大学でやります

オープンソースライセンスに関する授業を、今年も、砂原先生の
ところで1回(2コマ)やることになりました。

慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(日吉キャンパス)の「情報セキュリティ技術特論」で、11月07日にやらせていただきます。

たしか、京都と奈良先端と津田塾、九産大などはサテライトで参加できたはず。

これに合わせて、いつものスライドをアップデートしました。

おかげさまで、このスライド、いつのまにか3万回以上閲覧されていますね。
ありがたいことです。

なお、11月28日には、こんなセミナーにも登壇を予定しております

ご興味がありましたら、こちらもぜひ。


もっとオープンソースしたいと社長に言われたら~ OSS利用の成熟プロセス試案

Estación del Norte

IT企業なのに、
「オープンソースにしたら、売り上げは上がるのか」
「オープンソースにしたら、優れたエンジニアを採用できるのか」
「オレの若いころは・・・」
みたいなことを、まわりの上司や社長に聞かれたことはありませんか。

そんなことを聞く人ほど、オープンソースについて誤解していたり、いまだ偏見をもっていたり、自分ではまったくオープンソースソフトウェア(OSS)を使っていなかったり、使っていたとしてもOSSだと気づいていなかったり。中小・中堅のシステム開発会社みたいなところを想定しているんですが、IT技術を売りにする企業として、オープンソースに対する理解が、今どきそれはまずいだろうという感じです。そんな上司や社長は、まだまだ少なくありません。

そこで、本稿では、そんな上司や社長がいるIT企業に勤めている人のために、OSSの利用や、オープンソースプロジェクトへの参画について、どんなふうにすればいいのか整理してみました。

IT技術にたずさわる人たちが、上司や社長とオープンソースのビジネス利用について話をするとき、いくばくかの参考になれば良いのですが。
続きを読む


図解:Apache License2.0の特許条項

BikeShare Bike Patent

西尾泰和さんが「でかい企業のOSSがApache License 2.0だと嬉しい理由」として、Apache License2.0の特許条項を解説しています。

Apache License, Version 2.0の特許条項は、こんなふうになっています。

3. 特許ライセンスの付与
本ライセンスの条項に従って、各コントリビューターはあなたに対し、成果物を作成したり、使用したり、販売したり、販売用に提供したり、インポートしたり、その他の方法で移転したりする、無期限で世界規模で非独占的で使用料無料で取り消し不能な(この項で明記したものは除く)特許ライセンスを付与します。ただし、このようなライセンスは、コントリビューターによってライセンス可能な特許申請のうち、当該コントリビューターのコントリビューションを単独または該当する成果物と組み合わせて用いることで必然的に侵害されるものにのみ適用されます。あなたが誰かに対し、交差請求や反訴を含めて、成果物あるいは成果物に組み込まれたコントリビューションが直接または間接的な特許侵害に当たるとして特許訴訟を起こした場合、本ライセンスに基づいてあなたに付与された特許ライセンスは、そうした訴訟が正式に起こされた時点で終了するものとします。

licenses/Apache_License_2.0 日本語参考訳 Open Source Group Japan

図解にしてみると、こんなふうかな。

APL-Patents2

「あなた」は、特許ライセンスを受けるんだけど、それをもとに誰かに特許侵害訴訟を起こすことはできません。訴訟を正式に起こした段階で、元の特許ライセンスが停止されます。前提として、貢献者(各コントリビュータ)は、プロジェクトにコードを提供するとき、自分が持つ特許をライセンスしていなければならないけれど、これは貢献者がApache License 2.0でコードを提供していればいい。

さて、でかい企業がOSSをApache License2.0で提供している場合、そのデカい企業は、「あなた」であるか貢献者(各コントリビュータ)であるということなので、そのデカい企業から、”使っていたら後から「特許料払え!」と言われるという悲劇が起こらない”(by 西尾泰和)、と。

とはいえ、そのデカい企業からの特許訴訟リスクがなくなったとしても、特許訴訟リスク自体が完全になくなるわけではありません。たとえば、成果物に、どこかの誰かの特許侵害が含まれている可能性は残っています(Twitter / kazuho)が、これについては、パテントプールといった防御策があります(ソフトウェア特許とフリーソフトウェア – WikipediaOpen Invention Network)。

ライセンス文だと、「あなた」と「誰か」というのが、ちょっとピンとこない感じがするけれど、絵にすると自分でもちょっと分かりやすくなったような。

PS.図解を修正:Teminateの矢印の行き先を変更しました。


レビュー:OSSライセンスとは-著作権法を権原とした解釈

公益社団法人著作権情報センター(CRIC)が、”次世代を担う著作権法制の研究者・実務者の研究を奨励し、著作権法制の適切な発展を期することを目的として”募集している著作権・著作隣接権論文。その第9回で「OSSライセンスとは-著作権法を権原とした解釈」という論文が入賞しました。

この論文を書いた姉崎 章博さんは、NEC ソフトウェア技術統括本部 OSS推進センターでオープンソースライセンスなどのコンサルティングを手がけるかたわら、OSSライセンスの解説セミナーを多数行うなど、OSSライセンスの理解と普及のために活躍してきています。

その姉崎さんから「第9回著作権・著作隣接権論文集」(CRIC、非売品)を献本いただきました。姉崎さん、ありがとうございました。

さっそく読んでみました。

IT関係者は、オープンソースに接する機会も増えてきましたが、著作権にたずさわる法曹関係者はまだまだなじむ機会が少ないのか、まずOSSとその代表的なライセンスについて丁寧に説明していきます。

そのあとで、経済産業省が2002年度から公開してきた「オープンソースソフトウェアの法的諸問題に関する調査」報告書について再検討しています。そのひとつとして、報告書では、GPLがライセンス契約の形式にのっとっていないにも関わらず、ライセンス契約書としての問題点を取り上げていることに疑問を呈して、「OSSの各ライセンスの条文の書きぶりから見れば、著作権者の意思表示の単独行為と解することを基本に考えると違和感なく解釈できる」としています。

そのために、この論文では「ライセンス」というものを再確認して、ライセンスの形態は契約とは限らない、と説明している。

読んでみると、あらためて腑に落ちるところがたくさんあります。

オープンソースライセンスの捉え方については、この10年で大きな進歩があったと思いますが、一方で、ベストプラクティスと考えていることに、さらなるベストが見つかることがあるわけで。これは、なかなか労作だと思いました。

なかなか読んでみる機会は、すくないかも知れませんが、もっとアクセスしやすい形で公開されれば良いのにと思いました。

PS.@ITに、解説記事が掲載されました。
OSSライセンスで条件を指定する権利はどこからくるのか?(1):「OSSライセンス=契約」という誤解を解く – @IT

PS2. こんなのも書いてみた。
ライセンスとは何か、整理してみた


2014年パブリックドメインの日

著作権の保護期間は作者の死後50年(日本の場合)なのですが、
通常、各国で保護期間が切れる日が1月1日になっているそうです。

で、これが「パブリックドメインの日」(Public Domain Day)と呼んでアピールされていました。

とくに、ガジェット通信が積極的に取り上げていますね。

ちょっと面白いので、関連リンクをまとめておきます。

有名どころでは、小津安二郎とか力道山がいるそうです。


【アップデート】オープンソースライセンスの基礎と実務

新年、明けましておめでとうございます。
2014年も、よろしくお願いします。

さて、オープンソースライセンスの概略について説明してほしいというご要望に応えるため、2008年ごろから公開しているスライド「オープンソースライセンスの基礎と実務」をアップデートしました。

著作権から、ソフトウェアライセンス、オープンソースの概要、個々のライセンスの特徴を説明する資料です。オープンソースライセンスについて、情報系大学院で授業をやったり、勉強会などで講師を依頼されたとき、この資料を使ってしゃべっています。

_

スライド自体は、クリエイティブ・コモンズにしてあるので、ご活用いただければ幸いです。

新年早々、砂原先生のところで1回だけ授業をさせてもらうのですが、いつも超高密度になってしまうので、2コマでやることに。情報量としては変わらないんですが、時間的には余裕があるはずなので、少しばかりライセンス文書などを実際にながめる時間を増やしたいと思います。


訃報:高橋 信頼氏

OSSやITによる復興支援に関する情報発信などでご尽力されてきた、日経ITproの副編集長の高橋 信頼氏がお亡くなりになったそうです。Facebookでは、OSSコミュニティの面々が、高橋氏の書いた記事を発掘しており、その膨大さと内容の深さに、あらためて驚いています。

今でこそ、OSSプロジェクトがプレスリリースなどでメディア向けに情報配信するのが定着していますが、このような情報を早くから取り上げて、ITproで紹介してくれたのが高橋さんでした。もちろん、単なるリリースの焼き直しではなく、できるかぎり追加取材をして書くという姿勢を貫いておいででした。最近では、「記者の眼 – 山形県のMicrosoft Office再評価は「OpenOffice.orgからの逆戻り」ではない:ITpro」という記事がインパクトがありました。私自身も、旧二宮町でのOSS利用実証実験の際などで、大変お世話になりましたた。

昨年から今年にかけて、メジャーなOSSプロジェクトに日本から積極的に参加している開発者のインタビュー「OSS開発者に聞く!コミュニティー活動の実際 – OSS開発者に聞く!コミュニティー活動の実際」が印象に残っています。その発展系である「OSS支える!コミュニティー訪問」も楽しみにしていました。

日経BP社において、一番のOSSの理解者だったのだろうと思います。

私自身は、ここ数年、OSSのイベントや勉強会などに行く機会が減ってしまい、直接お会いする機会を逃していました。現在の仕事先が、わずかばかりながらOSSコミュニティへの活動を始めており、それを松江のRuby World Conferenceでご報告したいと思っていましたが、非常に残念です。

心より、ご冥福をお祈りいたします。