レビュー:OSSライセンスとは-著作権法を権原とした解釈

公益社団法人著作権情報センター(CRIC)が、”次世代を担う著作権法制の研究者・実務者の研究を奨励し、著作権法制の適切な発展を期することを目的として”募集している著作権・著作隣接権論文。その第9回で「OSSライセンスとは-著作権法を権原とした解釈」という論文が入賞しました。

この論文を書いた姉崎 章博さんは、NEC ソフトウェア技術統括本部 OSS推進センターでオープンソースライセンスなどのコンサルティングを手がけるかたわら、OSSライセンスの解説セミナーを多数行うなど、OSSライセンスの理解と普及のために活躍してきています。

その姉崎さんから「第9回著作権・著作隣接権論文集」(CRIC、非売品)を献本いただきました。姉崎さん、ありがとうございました。

さっそく読んでみました。

IT関係者は、オープンソースに接する機会も増えてきましたが、著作権にたずさわる法曹関係者はまだまだなじむ機会が少ないのか、まずOSSとその代表的なライセンスについて丁寧に説明していきます。

そのあとで、経済産業省が2002年度から公開してきた「オープンソースソフトウェアの法的諸問題に関する調査」報告書について再検討しています。そのひとつとして、報告書では、GPLがライセンス契約の形式にのっとっていないにも関わらず、ライセンス契約書としての問題点を取り上げていることに疑問を呈して、「OSSの各ライセンスの条文の書きぶりから見れば、著作権者の意思表示の単独行為と解することを基本に考えると違和感なく解釈できる」としています。

そのために、この論文では「ライセンス」というものを再確認して、ライセンスの形態は契約とは限らない、と説明している。

読んでみると、あらためて腑に落ちるところがたくさんあります。

オープンソースライセンスの捉え方については、この10年で大きな進歩があったと思いますが、一方で、ベストプラクティスと考えていることに、さらなるベストが見つかることがあるわけで。これは、なかなか労作だと思いました。

なかなか読んでみる機会は、すくないかも知れませんが、もっとアクセスしやすい形で公開されれば良いのにと思いました。

PS.@ITに、解説記事が掲載されました。
OSSライセンスで条件を指定する権利はどこからくるのか?(1):「OSSライセンス=契約」という誤解を解く – @IT

PS2. こんなのも書いてみた。
ライセンスとは何か、整理してみた