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ICMを用いたカラーマッチングについて

「モニターで見るのと印刷結果が違う...」
誰でも一度は経験したことがあると思います。モニター上ではとても綺麗なのに、印刷してみたら青っぽかったり、暗かったり。 

最近の家庭用のインクジェットプリンターはドライバの性能が良く、モニターで見るRGBを結構的確にCMYKに変換して出力してくれるため再現性は結構高いのですが、それでもイマイチ合わない場合があります。    

いろいろ試しては見るものの結局、「無理なんだ。プリンターでの印刷の色合いを考えて色を決めよう」と諦めてしまうという人が多いのではないでしょうか?もしくは、もう印刷なんかするもんか、とか? 

しかし、諦めて済ませない人たちがいます。プロのデザイナーの人たちです。モニターで見るのと印刷結果が違うとなったらそれは死活問題です。そこでプロの間で当たり前のものが  カラーマッチング(カラーマネジメント) です。モニターから、プリンター、スキャナー等違う機器間での色空間の違いを可能な限り合わせていこうというものです。 

Macではそこら辺が進んでいたためにCGデザイナーはMacを使っている人が多いようです。 
しかし、WindowsでもWindows98になって、ICM2.0がサポートされカラーマネジメントができるようになりました。
PSP5.0、6.0および7.0ではこのWindows98標準のICM2.0に準拠したカラーマッチング機能を標準装備しています(これって実はすごいことなんですよ)。 Photoshopほど詳細に設定は出来ませんが。         

カラーマッチングはとても難しいため詳しいことはWindowsのヘルプをお読みください。 
ここでは詳しい理屈は抜きにしてPSPでのカラーマッチングの設定の仕方をご紹介します。 


注意点
・この作業をするにはWindows98 or 98SE or Me or 2000が必要です。
・モニター、プリンターともにICMに対応しているのが条件となります。
・また、モニター、プリンターに専用のICCプロファイルが付属している事が必要です。ディスプレイにICCプロファイルが付属していない場合は解決策がありますので  こちら をご覧ください。
・皆さんの全ての環境(モニターやプリンターの種類)で上手くいく保証はありません。ご了承ください。

○カラーマネージメントの概念

ディスプレイ、プリンター、スキャナーなどの機器はそれぞれ色の再現性(発色、色域等)が異なります。それぞれの機器の色の再現性をパソコン側に認識させて、色をコントロールするのがカラーマネージメントです。
端的に言うとCRTのRGBをプリンターのCMYKに変換する作業をプリンターではなくPSPが制御する     と言うことです。
CMYKはRGBより色域が狭いため、モニター上の色でプリンターで再現できない色が出てきます。これらを違和感なくCMYKの色域に収める作業をICM2.0の変換エンジンが行います。完全に一致させる事が不可能なため、そのCMYK色域外のRGBをCMYKに収める方法が後述する「レンダリングの目的」としていくつもある訳です。

ICM2.0においてのカラーマネージメントはICCプロファイルを使用します。
プロファイルとはその機器(ディスプレイ、プリンター等)の色の出方を定義したファイルです。ですから、 その機械専用のプロファイルを使わないと色あわせは出来ません。
PSPでのカラーマッチングの方法

1.まず、モニターにプロファイルをインストールします。 
    Windowsのコントロールパネルにある画面のプロパティーの設定の詳細を呼び出します。      
  
その中の色の管理(上図)で追加をクリックして、そのディスプレイ用のICCプロファイルを追加します。         
上の画面では私がSONY E200を色温度5000Kで使っているので、ディスプレイに付属するFDDに入っているE200の色温度5000K用のプロファイルを関連付けています。

注意点
・あなたがお使いのディスプレイ用のプロファイルを関連付けてください。
・もしくはAdobe Gamma を使って作成したプロファイルを関連付けてください。

・お使いのディスプレイ用のプロファイルの中にも色温度・ガンマ別にプロファイルが用意されている場合は適したものを関連付けてください。
(モニターの調整のところでも述べたように、モニターの色温度は用意されているプロファイルにある色温度に設定する必要があります)

2.次にプリンターにもプロファイルをインストールします。 
  プリンターのプロパティーを呼び出します。 
  
その中の色の管理(上図、図はCanon BJF850のもの)で追加をクリックしてそのプリンター用のプロファイルを追加します。         
たいがいのプリンタードライバーにはもともとプロファイルが関連付けられていますので、この作業は必要ないことが多いと思います。
   

3.PSPでカラーマッチングの設定をします。        
  ファイル → 環境設定 → カラーマッチングを呼び出します。(下図) 
  
イメージ、グラフィック、テキストの生成がsRGBスペースになっていることを確認して
色の管理を使用可能にするにチェックを入れ、基本的な色の管理にチェックを入れます。
モニタのプロファイルにあなたがお使いのモニターのプロファイルを
プリンタのプロファイルにあなたがお使いのプリンタのプロファイルを選びます(この場合CNBJPRNがBJF850のプロファイルです)。

レンダリングの項目は
       知覚(画像)が写真向け       
       彩度(グラフィックス)は円グラフや棒グラフ等        
       相対色彩(校正)はロゴ等の色数が少なくそれがきっちり合っていなければいけないもの        
       絶対色彩(完全一致)はデバイスに依存しない色空間に対して色を割り当てる場合
 
         (注: カッコ内はWindows 2000でのレンダリング項目)

印刷する画像によって最適な項目を選択してください。これによってCMYKで表現できないRGBをCMYKに収める方法が変わるので印刷結果が大幅に異なります(イラストなどではその差が顕著に分かります)。
デジタルカメラの写真を印刷する場合は「知覚(画像)」に設定しておけば問題ないと思います。 少し彩度が低いと思う場合は彩度(グラフィックス)で印刷してみてください。

これで基本的にモニターとプリンターの色空間の整合性が取れ、モニターとプリンターの色空間の同期が取れました。よく見ると若干画像の色合いと明るさが変わっているはずです。CRTのRGBの色域をプリンターのCMYKの色域の中に押し込め、双方の統一を図り、画像を再構築しているからです。

         
基本的にはここまででカラーマッチングの設定はOKです。
  必要に応じて以下の設定を行なってください。                 
 

5.他のデバイスの色をモニターで確認するには下図のように色の校正にチェックを入れます。           
                  
これを適用すると、他のデバイスの色がCRTとプリンターで再現されます。例えば上の図では「jpcmyk06」というプロファイルを指定していますが、これは日本の印刷会社の業務用印刷機(CMYK分版のオフセット印刷)の標準的なプロファイルです。こうするとその写真(原稿)を印刷業者に持ち込んで印刷した場合の印刷結果をPSPのモニター上と家のプリンターで印刷したものでシミュレートできるわけです(持ち込む印刷業者からきちんとしたプロファイルが入手できる場合はより再現性が高まります)。

家庭でデジタルカメラの写真を家でカラーインクジェットプリンターで印刷するだけの場合はここのチェックは必要ありません。ただ、プロファイルさえインストールしておけば、様々な環境のシミュレートが可能です。9300KのダイヤモンドトロンのCRTでの見え具合を私のSONY E200(5000K)の環境でシミュレートしてみたり、EPSON PM−900Cの印刷結果をPSP上とCanon BJF850で印刷シミュレートしてみたりといった事が可能になるわけです。

つまり画像データを人に渡す場合にその人の環境(機器)をシミュレートしてレタッチするためにこの項目はある訳です。

ただ、この色の校正はCRTの色温度が5000Kでないと上手く機能しないようです。9300Kや6500Kではエミュレートされるデバイスをそのまま自分のプリンターのプロファイルを選択しても勝手に5000KにCRT表示も印刷結果もなってしまいます。色の校正を行う場合はCRTの色温度は5000Kがいいでしょう。


(補足)
  PSPで印刷するとモニターよりも印刷結果が明るくなったり暗くなったり、PSPで作った画像をHPにアップロードしてみたらブラウザーで見た画像がPSPで作ったときと色が違って困っている人がいるという話を聞いたことがありますが、モニタガンマの設定が 1 以外になってないでしょうか?確認してみてください。 ICMによるカラーマッチングを使う場合とWEB用画像を作成する場合はモニタガンマの項目はいじらないで下さい。というよりモニタガンマの項目はいじらないのが基本です。


ガンマ値の話

印刷する際にもっとも問題になるのは色の違いよりも明るさの違いです。モニターで見ると適正露出なのに印刷するとなぜか明るくなりすぎたり。これではレタッチもままなりません。なぜこのような症状が起きるのか?これには ガンマ値の問題があります。各機器ごとに設定されているガンマ値が違うからです。
ガンマ値とは中間調の濃度です。CRTはガンマ2.2前後ですが、プリンターは一般的にガンマ1.8です。ちなみにデジタルカメラはsRGBに合わせてあるためガンマ2.2です。こういった ガンマ値のずれが印刷と表示のずれを発生させます

ちなみに、私の環境(CRT:SONY E200、Printer:Canon BJF850)ではCRTのガンマ値は2.5、プリンターはデフォルトで1.8です。ですから普通に印刷するとモニター表示よりも明るく印刷されてしまいます。
PSPでICMを用いてカラーマッチングするとCRT、プリンターともにsRGBに合わせる形でカラーマッチングを行うため、CRT、プリンターともにガンマ値2.2になります。そのためCRTでの表示はカラーマッチングを行わない時に比べ若干明るく、プリンターの印刷は若干暗くなり、CRTとプリンターの印刷結果は非常に近くなります。

脱線しますが、MacはCRTのガンマ値が1.8に設定されています。デジタルカメラはガンマ値2.2なので、普通にMacで表示すると 実際より明るく表示されてしまいます。この場合はガンマ値を変更できるPhotoshopを用いる事になります。

○印刷

さぁ、いざ印刷してみましょう!
  このカラーマッチングの設定を行った状態で、普通にプリンターの推奨設定で印刷すればいい   だけです。もう少し正確に言うと「ドライバーによる色補正」モードで印刷すると言う事です。EPSONなら「ドライバーによる色補正の”自動”もしくは”自然な色合い”」、Canonなら「色補正の”自動”もしくは”マニュアル調整”での無補正状態」で印刷します。これでCRTと印刷のだいたいの明るさと色合いはマッチングしているはずです。合わない場合はドライバーによる色補正をOFFにして下さい。

ここで注意しなければいけないのはプリンターのICMモードは使わない と言う事。プリンターのICMモードはプリンター側からICMによるコントロールを行う事でCRTとプリンターの色合わせを行います。今は、PSP(アプリケーション)からICMを用いてCRT、プリンターをコントロールしているため、プリンターのICMモードを使うとPSP側の設定が無視されて上手くICMが機能しません。注意してください。

また、プリンターの写真を綺麗に印刷する機能は使わないのはあたりまえですね。EPSONの「オートフォトファイン」、Canonの「オートフォトパーフェクト」等です。これは画像に修正を加えますので、これらを使ってCRTと印刷の結果が合わないというのは非常にナンセンスです。


また注意して欲しいのが、このモードにしていると同じ画像を開いた場合でもPSPでの表示と他のアプリ(ブラウザー等)での色の再現が全然違うということ   です。ですからWeb用の画像を作成するなど、印刷を前提としない画像を作成する時は「色の管理を有効にする」のチェックをはずします 。これで他のアプリと同一の色合いになり、いつも通りに使えます。また、WEB用の画像を作成する場合は色温度も9300Kに設定しておいた方が良いかもしれません。大多数のユーザーは色温度を9300Kのままいじってないと思われるからです。

○補足

ICMによるカラーマネージメント、いかがでしたでしょうか?        
非常に難解で融通が利きません。しかし用途を限定してきちんと設定すれば、それなりの見返りはあると思います。

ただ、ディスプレイの調整をきちんとしておけば、プリンタドライバーまかせで印刷してもそれなりの再現性は得られるのでICMを用いる必要はそれほどないと思います。ですのでお勧めはしません。機器付属のプロファイルも結構いいかげんですしね。

では、ICMを用いるメリットは何か?と聞かれれば、やはり色と明るさが合う!の一言に尽きるでしょう。また、仕事で写真(原稿)を入稿しなければいけない人にとっては、印刷結果のシミュレーションができるということは大変なメリットになります。プリンタードライバー任せでは写真の雰囲気は忠実に再現できても色一つ一つを見るときちんと再現できていないことも多いものです。例えば風景の中の花の色がCRT上のイメージと違うといった場合などがよくあります。これはその花の色がプリンターの色再現域外の色だったりすることもある訳です。ICMを用いればプリンターの再現域外の色はCRTでも表示されないので的確にレタッチを行いイメージに近づけてからプリントすることが出来ます。これがICMのメリットです。