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[[Programing]] > part2.yaccによるWebスクリプト言語
[[Part1.>making_script01]]でJavascript電卓ができたので、次は簡単なスクリプト言語を作ってみます。スクリプト言語の開発に必要な基本的な技術を確認するために、ものすごーく簡単なスクリプト言語を作ります。
このページでは、kmyaccをツールとして、Javascriptで動くものを作ります。構文木などは作らないで、別のプログラミング言語へ変換だけやります。
''とりあえず、SaruMane Script(猿真似スクリプト)という名前を付けることにします。''
#contents
*スキャナーを作る [#rd75ede8]
スクリプト言語では、電卓と違って、文字列やコメントなどを扱うので、まずスキャナー(字句解析)を作り直します。
構文解析に先立って、コードの文字の切り出しと分類を行うのが、このスキャナー。字句解析とかレキシカルアナライザー(Lexical analyzer)と呼ばれます。
電卓では、yaccのサンプル定義ファイルに、スキャナーのコードが埋め込まれていましたが、それを差し替えます。
とりあえず、ここでは、スキャナーが動作するサンプルページを用意しました。
-[[サンプルページ:http://www.catch.jp/program/yacc/scanner.html]]
文字の判別には、正規表現を使っています。
元の電卓用スキャナーとyaccの実装スタイルに合わせて、グローバル変数(!)を使っています。
*スキャナーの動作 [#lc6dc3d4]
スキャナは、コードを次のように分類して構文解析に送ります。
-IDENT
--役割:識別子(変数名や関数名)
--規則:最初の文字が、英文字(a-zとA-Z)にアンダーバー(_)。その後ろに英数字
-NUMBER
--役割:数値
--規則:小数点も使える。
-STRING
--役割:文字列
--規則:ダブルクォーテーション(")かシングルクォーテーション(')で囲む
-COMMENT
--役割:コード中のコメント(注釈)。
--規則:「//」
-記号
--計算記号やカッコなど
次のように入力した場合
123abc"xyz"//comment
次のように表示されます。
-1 : 123abc"xyz"//comment,token : 123,yylex : 257
-1 : abc"xyz"//comment,token : abc,yylex : 258
-1 : "xyz"//comment,token : xyz,yylex : 259
-1 : //comment,token : //comment,yylex : COMMENT1
先頭は改行位置(改行記号がない場合は「-1」)。そのあと、現在解析している文字、切り出し結果、分類結果と続きます。
なお、コメント文を判別できるようにしています。通常、コメント文は無視して捨てるけれど、この簡易スクリプト言語は変換器なので残すようにしています。
*スキャナーとパーサーを組み合わせる [#z492ef3b]
動作確認のため、スキャナーで分類した結果を素通しするような構文解析器(parser:パーサー)を作ってみました。
program: /* empty */
| program stmt { setAnswer(outputs); }
;
stmt : NUMBER { outputs += "NUMBER: " + yylval + "<br>";}
| IDENT { outputs += "IDENT: " + yylval + "<br>";}
| STRING { outputs += "STRING: " + yylval + "<br>";}
| COMMENT { outputs += "COMMENT: " + yylval + "<br>";}
| '\n' { outputs += "(CR)<br>"; }
| error { $$ = ""; }
;
-[[サンプルページ:http://www.catch.jp/program/yacc/script25.html]]
スキャナーが分類した結果は、構文解析側で判断して、分類とデータを表示します。
たとえば
123abc"xyz"//456
と入力すると、
NUMBER: 123
IDENT: abc
STRING: xyz
COMMENT: //456
と表示されます。
-[[yaccソースファイル:http://www.catch.jp/program/yacc/script25.jsy]]
*プログラムっぽいものを書けるようにする [#be1bdb55]
次は、パーサーを拡張して、代入文と関数と引数を書けるようにします。
これで、プログラムっぽいものが、記述できるようになります。
-[[サンプルページ:http://www.catch.jp/program/yacc/script42.html]]
たとえば、次のように入力すると
a=200
x()
y(100)
z(1,2,3,4)
a=1*(2+3)
b=x(100)
c=200 //comment
次のように、そのまま表示されます。
a=200
x()
y(100)
z(1,2,3,4)
a=1*(2+3)
b=x(100)
c=200
//comment
入力したプログラムを、いったんスキャナーでバラバラにして、それをパーサーで組み立てなおしているのです。
ここまでの段階で対応しているのは、次の構文です。
-関数呼び出し funcall
--関数名(引数) //引数あり
--関数名() //引数なし
-代入文 assign
--変数名=数式
-コメント文 「//」から行末まで
-引数 args
--数式1, 数式2・・・引数3
--数式1
-数式 expr
--足し算, 引き算, 掛け算, 割り算, 余り
--カッコによる優先順位付け, 関数呼び出し
-基本データ構造 primary
--識別子(変数名, 関数名)
--数値
--文字列 「””」か「' '」で囲んだもの。エスケープ記号とか効かない
構文ルールに合致しない場合は、「syntax error」と表示されます。
たとえば、次のように、文字だけ書いても、関数呼び出しでも代入文でもコメント文でもないため、「syntax error」と表示されます。
abc
ここまでの、ソースファイルは次のようになっています。
-[[yaccソースファイル:http://www.catch.jp/program/yacc/script42.jsy]]
*Processing.jsっぽく書けるようにする [#m9f7c70a]
ここで作っている簡易スクリプト言語は、ターゲット言語を[[Processing.js>Processing.js基礎最速入門]]にしています。Processing.jsは、ビジュアルデザイン用プログラミング言語Processing(プロセッシング）のWeb版です(JavascriptベースのProcessing)。グラフィックアニメーションやユーザーによる操作が取り扱いやすくなっています。
Processing.jsによる、アニメーションサンプルはこんな感じです。
サンプル ＞ [[mouse_move:http://www.catch.jp/program/processing.js/mouse_move/]]
簡易スクリプト言語の主な機能は、次のような感じにします。
-命令や関数などはProcessing.jsとおんなじ。
-末尾のセミコロン(;)は不要。
-If文とかFor文とかWhile文とかも、(とりあえず)なし。Processing.jsだと、なしでもそれらしいプログラムが作れるので。
-クラス定義はあるけれど、クラス生成は(今のところ)なし。
で、こんなふうに末尾のセミコロンなしのプログラムを変換すると
void setup() {
size(250, 250)
frameRate(20)
}
void draw() {
background(0)
ellipse(width/2, height/2, mouseX, mouseY)
}
こんなふうに、Processinng.jsに変換されます。
void setup() { size(250, 250);
frameRate(20);
}
void draw() { background(0);
ellipse(width/2, height/2, mouseX, mouseY);
}
サンプルページとソースファイルは次のようになっています。
-[[サンプルページ:http://www.catch.jp/program/yacc/script55.html]]
-[[yaccソースファイル:http://www.catch.jp/program/yacc/script55.jsy]]
これだけでは、機能的には特別うれしいところはありませんが、独自文法のスクリプト言語の作るもとになるはず。
*Processing.jsに変換して実行する [#c9c417c4]
ついに、できました！
変換したコードをProcessing.jsに渡して実行します。
とりあえず、サンプルページのRunボタンをクリック。それから、右側の黒色エリアにマウスポインタを合わせると、その位置に合わせて楕円が描かれます。そのすぐ下には、変換後のスクリプトが表示されます。
-[[サンプルページ:http://www.catch.jp/program/yacc/SaruMane/SaruMane_Script.html]]
-[[yaccソースファイル:http://www.catch.jp/program/yacc/SaruMane/sarumane_script.jsy]]
*動作上の制約 [#y06871df]
非常に簡易的なスクリプト言語なので、次のような注意が必要です。
**ブロックコメントに非対応 [#i0d46da3]
「/* */」を使った、複数行にまたがるコメントは、今のところ使えません。
**デバッグツールによるデバッグ [#v3fdce02]
スクリプトは、変換して直接実行しているので、デバッグツールを適用できません。
変換後のスクリプトを、Processing.jsに直接貼り付けるともう少しやりやすくなるかも。
**グローバル変数の衝突回避 [#u96ec2c5]
SaruMane Scriptは、いくつかグローバル変数を使っています(yyyBuffer、yyyToken、yylval)。特別な名前にしてあるので、衝突することは、ほとんどないと思いますが、念のため注意してください。
グローバル変数を使っていると、他のプログラムと衝突するので、Javascriptの場合は変換プログラムをクロージャーにするとか、対策しなくちゃならないなー。と思っていたけれど、調べてみたら、ちょっと手間がかかるので、後回しにしました。
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*ソース [#qed12373]
-[[ycatch/SaruMane.js - GitHub:https://github.com/ycatch/SaruMane.js]]
*参考資料 [#l1457785]
-[[八角研究所 : Series: Flash/Flex で作る俺様言語(kmyacc編) «:http://www.hakkaku.net/series/flashflex%e3%81%a7%e4%bd%9c%e3%82%8b%e4%bf%ba%e6%a7%98%e8%a8%80%e8%aa%9ekmyacc%e7%b7%a8]]
--[[Flash/Flexで作る俺様言語(kmyacc編)（1）- kmyacc の ActionScript 版を使ってみよう:http://www.hakkaku.net/articles/20080226-154]]
--[[Flash/Flexで作る俺様言語(kmyacc編)（2）- kmyacc で BASICっぽい言語を作ってみよう:http://www.hakkaku.net/articles/20080307-158#more-158]]
--[[Shibuya.abcより、携帯電話で遊べる俺様言語を作ってあそぶ(1):http://www.hakkaku.net/articles/20080317-170]]
-[[Rubyで作る奇妙なプログラミング言語~Esoteric Language~:http://www.amazon.co.jp/gp/product/4839927847?ie=UTF8&tag=plaseboeffect-22&linkCode=as2&camp=247&creative=7399&creativeASIN=4839927847]] Amazon
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-[[Rubyを256倍使うための本_無道編:http://www.amazon.co.jp/gp/product/4756137091?ie=UTF8&tag=plaseboeffect-22&linkCode=as2&camp=247&creative=7399&creativeASIN=4756137091]] Amazon
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-まつもと直伝 プログラミングのオキテ 第6回 メタプログラミング
--http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20070604/273453/
--まとめてみると，Rubyは非常にDSL向きな言語だと分かります。
-Racc で遊ぼう
--Raccで電卓をいろいろ作るチュートリアル
--http://www.mnet.ne.jp/~tnomura/racc.html
-極めよRuby道：第5回 Rubyで書くフロントエンドとパーザ
--http://www.notwork.org/~gotoken/mag/cmagazine/gokudo/5th/
-[[プログラミング言語を作る:http://kmaebashi.com/programmer/devlang/index.html]]
-[[ウノウラボ by Zynga Japan: 1時間で作る簡易スクリプト言語(JavaScript):http://labs.unoh.net/2007/03/1javascript.html]]
-[[JavaScriptメモ]]
-[[ParserGenerator - catch.jp:http://www.catch.jp/wiki/index.php?ParserGenerator]]
![[PukiWiki]](image/pukiwiki.png "[PukiWiki]")
