WordPressのテーマ(テンプレート)のライセンスは、本体と共通なのか
※「オープンソース・ライセンスの談話室」から移動したページです。
※この記事は、2012/03/04に最初に公開し、2012/11/07-09に大幅に改訂しました。
ブログエンジン/CMSとして高いシェアを持つオープンソースソフトウェアWordPress(ライセンスは、GPL2またはそれ以降)。この表示用のスタイルテンプレートであるWordPressテーマが、本体と同じライセンスが適用されるのか、ということで長らく話題になっていました。
結論だけ書くと、「WordPressテーマの PHP コードは、すべて(改変版も新規開発も)がGPL(GPL2またはそれ以降) でなければならないが、画像や CSS は GPL でもそうでなくてもよい」。
WordPressのテンプレートタグを使ったテーマは、GPL(GPL2またはそれ以降) でなければなりません。ただし、対象になるのはテーマのコード(PHP)だけ。画像やCSS・JSファイルは別のライセンスを設定できます。
あまり現実的ではありませんが、テンプレートタグなどを使ってない場合は、自由にライセンスを設定できます。テンプレートタグを使う場合でも、WordPressの著作権者全員の許可を得ていれば、違うライセンスを設定できます。
GPL互換ライセンスという表現がでてくるけど、100%GPL互換という意味。
ほかにもあります。
- WordPress | 日本語 » テーマも GPL ライセンス
- だぶだぶノート » » WordPressテーマとGPL伝播問題
- ワードプレスのGPLライセンスについて – インターネットビジネス – 教えて!goo
- 自作WordPressテーマのライセンスについて調べてみた(WordPressとGPL) | マイペースクリエイターの覚え書き
- GPLは WordPress を不自由にするのか? – ja.naoko.cc
- 11/10 WordBench神戸のふりかえり | WordBench
- WordPress › フォーラム » WPプラグインのライセンスについて これは、プラグインの話か
- 今さら…のWordPressとGPLライセンス | ゆっくりと…
分かりやすい
以下は、WordPressテーマにGPLが適用されたとき(ほとんどの場合そうですが)、なにが起こるか/なにをしなければいけないかを整理したものです。最善を尽くしていますが、内容について保証はありません。詳細は、ライセンス文書自体を確認ください。
1. まず、WordPressテーマのカスタマイズ
私は、自分でやったことはないんですけれど、簡単にできるらしい。
テーマファイルは、PHPファイル・画像ファイル・CSSファイルなどで構成されています。このうちPHPファイルは、テンプレートというより、WordPressのテンプレート関数を呼び出すスクリプトになっています。
- WordCamp Osaka 2012で発表されたスライドまとめ8つ – W3Q
- 【随時追記します】WordCamp大阪2012のレポート記事集めました #wcosaka – トヤヲ.ネット
- 文系デザイナーでも大丈夫!レスポンシブWEBサイトをWordPressで作ってみよう
- エンジニアの為のWordPress入門 〜WordPressはWebAppプラットフォームです〜
2. 配布されているテーマは、GPLだけど改変して商用提供してOKか?
GPLは、商売に利用してOKなんです。
WordPressテーマがGPLであっても、デザイン料やカスタマイズ料は請求してもよい。
また、作成したGPLなWordPressテーマは、インターネットなどで公開しなくてもよい。
とはいえ、独自ライセンスによるライセンスビジネスは大変かも。
GPLについて解説
3. 改変したWordPressテーマのライセンスは?
改変したテーマのライセンスも、元と同じにしなければいけません。つまり、GPL(GPL2またはそれ以降)でなければなりません。ただし、対象になるのはテーマのコード(PHP)だけ。画像やCSS・JSファイルは別のライセンスを設定できます。
4. WordPressテーマを作成・改変した企業/人は、GPLだと、なにをしなければいけないか
誰かにWordPressテーマを提供したら、その相手にソースコードを提供します。
そして、WordPressテーマのPHPコードには、元と同じライセンス(GPL2またはそれ以降)を適用します。
GPL2のライセンス文書もわたします(詳細は、GPL2のライセンス文書の第2項に書いてあります)。
ソースコードを渡すのは、WordPressテーマを渡した相手だけ。
インターネットで公開する必要はありません(本当)。
また、画像とCSS・JSファイルは別ライセンスにできます。
- GNU 一般公衆利用許諾契約書 – GNU プロジェクト – フリーソフトウェア財団 (FSF) バージョン2の日本語参考約
5. 作成・改変したWordPressテーマを受け取った企業/人は、なにができるか
自由に「複製、再配布、改変」ができます。
再配布するときは、WordPressテーマのPHPコードは、元と同じライセンス(GPL2またはそれ以降)を適用します。
とはいえ、「複製、再配布、改変」をしてもいいし、しなくてもいい、という意味です。
また、画像とCSS・JSファイルは別ライセンスの可能性があります。
6. WordPressのWebサイトを見た人は、なにができるか
Webサイトを見ただけでは、新規作成であれ改変版であれWordPressテーマの再配布を受けることはできません。頼んでみてOKだったらいいけれど、強制はできません。
なぜなら、Webサイトを見た人は、WordPressというプログラムの出力結果を見てるだけ。
WordPressテーマのファイルを受け取っていないため、GPLの対象者になりません。
7. WordPressテーマを作成・改変する企業/人は、どうやって商売するか
WordPressテーマがGPLであっても、デザイン料やカスタマイズ料は請求してもかまいません。
また、作成したGPLなWordPressテーマは、インターネットなどで公開しなくてもかまいません。
納入したWordPressテーマは、GPL(GPL2またはそれ以降)になるので、納入された顧客はそれを自由に複製・配布・改変してもよいし、しなくてもよい(No.5と同じ)。
8. WordPressテーマに、企業ロゴやキャラなどを組み込んだら、企業ロゴやキャラがGPLになる?
GPLにはなりません。
WordPressテーマに組み込まれる画像ファイルなどは、GPLの適用対象ではないからです。
WordPressにもともと付属していた画像などを改変する場合は、GPLの適用対象になっているかも知れませんが、あとから追加した企業ロゴやキャラなどは無関係です。
9. 会社で作成したWordPressテーマはGPLなんだから、社内Webデザイナーであるわたしは、個人的に使ってもいい?
職務で仕事するWebデザイナーやプログラマー・ライターの成果物は、各個人の著作物ではなく、会社の著作物になります。そのために、勝手に個人の著作物として利用できません。これは、WordPressテーマであっても同じです。
ただし会社が、インターネットなどで公開しているWordPressテーマであれば、デザイナー個人が利用しても問題ありません。この場合、会社による公開がGPL(GPL2またはそれ以降)になるので、利用する個人もそれに合わせることになります。
また、会社と社員との間で、特別な職務契約や就労規則があれば別ですが、その場合も誰が当初の著作権者で、誰が配布を受けるのか明確にしておく必要があるでしょうし、他者に提供した段階でGPL(GPL2またはそれ以降)の適用対象になります。
10. 改変ではなく新規でWordPressテーマを作成した企業/人は、なにができるか
~新規でテーマを作成した場合は、改変ではないので独自のライセンスを設定できます。
なぜなら、WordPressで運用されているサイトをみただけでは、GPLの影響を受けないから。
テーマファイルを受け取っていないため、GPLの対象者になりません。~
新しいWordPressテーマを自社で使用するだけなら、テーマファイルとして公開する必要はありません。たとえば、自社のWebサイトで使う場合などでは(自社サイトが自社外に公開されていても)、WordPressテーマを単独で公開しなくてもかまいません。
もちろん、WordPressテーマを単独でダウンロード可能にしてもOKです(ダウンロード可能にするときは、PHPコードにGPL2またはそれ以降を適用)。
WordPressテーマを誰かにわたす場合(たとえば、お客様に納入する、ダウンロード可能にする)、独自ライセンスは適用~できます~できません。必ず、PHPコードはGPL(GPL2またはそれ以降)にしなければなりません。なぜなら、WordPressテーマを新規で作成した場合、コード(PHP)がWordPressのテンプレートタグなどを含んでいるとWordPressの派生物となり、さらに、お客様への納入はWordPress派生物の領布となるからです。
結論として、提示された WordPress テーマは WordPress の著作権の元にあるコードの派生物を含んでいます。それぞれ独自の作品である画像、CSS、PHP ファイルをまとめたこれらのテーマは、全体的を GPL ライセンスにする必要はありません。むしろ、PHP ファイルは GPL ライセンスの要件に制約されるが、画像や CSS はそうではないと言えます。サードパーティのテーマ開発者は、希望するなら制限付きの著作権を適用することができます。
最後に、WordPress の著作権に制限されない合法な WordPress テーマを作成することも可能ということを言っておきます。しかしそのようなテーマはこのソフトを有益なものにしている WordPress 関数をまったく使わないものである必要があります。
上記で明確に述べられているように、「PHP ファイルは GPL ライセンスの要件に制約される」のです。
11. WordPressテーマのライセンスは、MITライセンスや修正BSDライセンスでもいいんでしょ
WordPressテーマのライセンスは、MITライセンスや修正BSDライセンスではいけません。
MITライセンスや修正BSDライセンスはGPL互換ライセンスですが、GPL互換ライセンスとGPL系ライセンスは同じではありません。じつはWordPressテーマのライセンスはGPL互換ライセンスというだけではダメなんです。GPL(GPL2またはそれ以降)でなければなりません。これは、新規作成でも改変でも同じです。
オープンソースでライセンス互換性というのは、「異なるライセンスが適用された複数のソースコードを結合して、別のソフトウェアを作成することが許可されているか」を説明する言葉です。互換性があるライセンス(たとえば、GPL2とMITライセンス)は、その条項が互いに矛盾していないので、結合して新しいソフトウェアを作ることが許可されています。互換性がないライセンス(たとえば、GPL2とApache2)は、その条項が互いに矛盾しているので、結合して新しいソフトウェアを作ることは許可されていません。
では、ライセンスに互換性があり、新しいソフトウェアの作成が許可されていた場合、その新しいソフトウェアのライセンスには、何を選べばいいでしょうか?
これは次のようになります。
- 「GPL2またはそれ以降」+「MITライセンス」-> 「GPL2またはそれ以降」
- 「GPL2またはそれ以降」+「修正BSDライセンス」-> 「GPL2またはそれ以降」
GPLとMIT/修正BSDライセンスを比較すると、両者の条件は矛盾していません(つまりライセンス互換性がある)。ですが、条件はGPLのほうがきびしくなっています。そのために、結合された新しいソフトウェアは、ライセンス条件のきびしいGPLに合わせなければならないのです。
WordPressテーマは、PHPコードにテンプレートタグを含んでいるためWordPressの派生物となり、配布時にはGPL互換ライセンスというだけでなく「GPL2またはそれ以降」を適用しなければなりません。
もしMITライセンスや修正BSDライセンス、または独自ライセンスで配布されているWordPressテンプレートがあって、それがテンプレートタグを含んでいれば、ライセンス違反の可能性があると私は思います。
12. オープンソースやGPLに敬意をはらって、WordPressテーマを作るべきだよね
FOSS(オープンソースソフトウェアやフリーソフトウェア)は、自由に利用できるソフトウェアを作り続けるためのベストプラクティスのひとつです。その環境を維持することは、とても重要なことです。そのために、オープンソースやGPLに敬意をはらっていくことが奨励されると、私も思います。たとえば、WordPressの開発やフィードバック・プロモーションに協力することは、大切なことです。
とはいえ、オープンソースソフトウェアを利用(複製、配布、修正)する場合、
敬意をはらうだけでは不十分です。いうまでもなく、ライセンス条件をきちんと理解し守る必要があります。WordPressテーマに関していうと、その作成・改変は、WordPressの派生物を作ることと同じになるので、ライセンスを守り「GPL2またはそれ以降」を適用しなければなりません。極端なことをいえば、オープンソースであることに敬意を払わないとしても、ライセンス条件は守らなければいけません。
13.WordPressテーマの作り方をブログとかで説明したら、説明文もGPLになるの?
説明文は、GPLでなくても大丈夫だと思います。
説明文は、テンプレートタグを含んでいても、WordPressプログラムの一部として動作するわけではないので、派生物とはならないと考えています。
とはいえ、WordPressテーマは、ソフトウェア開発者でないWebデザイナーでも気軽に作れるWordPressの派生物です。提供時には、そのライセンスが「GPL2またはそれ以降」になることは、きちんと説明したほうがいいでしょう。
GPLは伝搬性があります。「ウィルス性」と批判されたこともあります。不用意に適用されると、自分たちが当初想定していなかった範囲まで、GPLの対象となってしまう可能性があります。場合によっては、お客様が困ることもあるかもしれません。
ですから、WordPressテーマを作る人たちが、GPL(GPL2またはそれ以降)の適用範囲をきちんと適用することが不可欠です。WordPressを活用される皆さんが、GPLとその実務に関して理解を深めることは、WordPressコミュニティを一層豊かなものにすると思います。
以上。
参考になる情報
字幕付き動画「WordPress はなぜ GPL ライセンス?」をご覧ください。WordPressプロジェクトの共同創始者マット・マレンウェッグが、この問題について説明しています。