オープンソースソフトウェア(OSS)とオープンソースライセンスについてよくある質問と、その回答を整理しました。分かっているようで、実は勘違いしていた、なんて人もけっこういます。
本当に、よくある質問
ソースコードを公開しているソフトウェアは、すべてOSSですよね?
オープンソースは、ソースコードを公開しているだけではありません。誰でも自由に利用(複製、配布、改良)できるという条件を備えています。
たとえば、Webサイトにサンプルコードが公開されていても再利用できなければ、それはオープンソースではありません。オープンソースの普及団体である「The Open Source Initiative」(OSI)では、OSSのライセンスが備えるべき条件について、「オープンソースの定義」(The Open Source Definition)で定めています。
OSSは、必ず無料で配布しなくちゃいけないの?
OSSは、無料で配布しても良いし、有料で販売しても構いません。サポートや手数料を取ることもできます。販売相手は、入手したソースコードを自由に複製・配布・修正できます。
実際、オープンソースを入手する方法には、無料と有料の両方がありますよね。たとえば、Linuxはインターネットで無料でダウンロードすることもできますし、Red Hatの「Red Hat Enterprise Linux」をサポート付き製品として有料で購入することもできます。
OSSは、すべてボランティアが開発している?
これは、ボランティアとは何かというイメージと関係しています。OSSの開発は、いくつかのパターンがあります。単なる個人プロジェクトもあれば、企業や団体が、自分たちの成果をそのままオープンソースとして公開している場合もあります。また、開かれたプロジェクトでは、個人と企業の参加者が混ざっている場合もあります。企業から参加している人は、給料をもらいながら、仕事の一部としてオープンソースに関わっているのです。
あなたはボランティアというと、どのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。被災地に出かけて片づけ仕事を手伝う人たちの姿でしょうか。赤い羽根共同募金とかで「よろしくお願いしまーす!」と大きな声を張り上げている姿でしょうか。広辞苑で”ボランティア”という言葉を引いてみると「自ら進んで社会事業などに無償で参加する人」と説明してあります。この一文の”社会事業に無償で参加する人”というのが、一般的なボランティアについてのイメージではないでしょうか。
オープンソースのボランティアというのは、”社会事業に無償”というより、”自ら進んで、見返りを求めることなく活動する”という面が強くなっていると思います。
OSSの改良版は、必ずOSSにしなければならないの?
OSSの改良版は、必ずOSSになるとは限りません。確かに「GPL」のように、”必ず、○○○○しなければならない”という条件を持っているオープンソースライセンスもありますが、「修正BSDライセンス」では、別のコードに組み込んで、全体として自由にライセンスを設定できます。
前述の「オープンソースの定義」では、”OSSの改良版をOSSにしてもいい”(改良版をOSSにすることを許可する)としており、”絶対に”とは書いてありません。
GPLに関する、よくある誤解
こちらは、GNU GPLに関して、わりとありがちな誤解。GPLの誤解と、OSSに対するよくある質問が、ごちゃごちゃになっている人も、たまに見かけますね。
GPLが適用されたソースコードを改変したら、改変版ソースコードを公開しなければならない。
バイナリーコードを渡した相手に、改変/非改変に関係なくソースコードも元と同条件で入手可能にする。自社内利用やWeb利用なら適用外。
GPLではビジネスできないんでしょ
ビジネス利用可能。ライセンスビジネスは難しい。でも、導入や運用・保守、情報提供のビジネスはあり。
GPLは、ライセンス条項を変更できないんでしょ
例外条項で追加可能(GPL2 第10条、GPL3 第7条)。
条件変更ではないが、前文で、適用範囲を明確にしている場合もある
GPLにすると、FSFに著作権や特許をとられるちゃうんでしょ
ライセンス違反に対して差止請求などを起こせるのは著作権者のみであるため、「GNUプロジェクトは、コードの受け入れに関し、米国著作権法の庇護を享受するため、ライセンス如何に関わらず、寄贈されたコードの著作権を原著作者より明示的にFSFに譲渡する場合にのみ受け入れている」 – Wikipdia GPL
GPLからクローズドソースにライセンス変更できるの?
著作権者であれば、GPLからクローズドソースにライセンス変更できます。
ただし、いくつかのポイントがあります。
・著作権者が複数の場合、全員の承認が必要(事前の取り決めがない場合)
・すでに、GPLが適用されたソフトウェアを入手した人に対して、取り消しできない。
・他のGPL適用ソフトウェアを利用していない。
今までGPLが適用されていたソフトウェアが、バージョンアップでライセンスが変更されたら、今までのソフトウェアのライセンスも変わっちゃうの?
いいえ。入手済みの古いバージョンのソフトウェアのライセンスは変わりません。さきほど書いたように、一度GPLが適用されたソフトウェアを提供したら、著作権者と言えども、そのGPLは取り消しできません。
GPLだったが適用されているソフトウェアにを改変して広告を表示してもいいの?
はい。広告を表示しても構いません。
GPLは、著作権の範囲内でソフトウェアを制約します。広告の表示は著作権とは無関係ですし、著作権法違反とはならないでしょう。
参考になる資料
- GNU General Public License よくある誤解 – Wikipedia
- GNU GPLに関して良く聞かれる質問 – GNU プロジェクト – フリーソフトウェア財団 (FSF) 日本語訳 GPL2が対象
- Frequently Asked Questions about the GNU Licenses – GNU Project – Free Software Foundation (FSF)英語版 GPL3も含む
- 【GNU】アンチGPLなプログラマ3【汚染対策】/パソコン情報局
さらに知りたい
- なぜ、オープンソースという言葉を使うとき「オープンソースの定義」に合わせたほうが良いのか
- 「GPL系ライセンス」とか「GPLと互換性のあるライセンス」とか「GPLv2またはそれ以降」って何だ!? |オープンソース・ライセンスの談話室
ピンバック: 人気のTwitter専用クライアント「Tween」、GPLからライセンス変更 | オープンソース・ライセンスの談話室
ピンバック: WordPressの標準テーマ(テンプレート)のライセンスは、本体と共通なのか | オープンソース・ライセンスの談話室