投稿者「Yutaka Kachi」のアーカイブ

定番オンラインソフトのオープンソース化 - FTPクライアントFFFTP

Bench of FTP

パソコンで何かをやるとき、オンラインソフトのお世話になることは多い。わざわざ購入するまでもない比較的シンプルなソフトウェアをネット経由で入手する「オンラインソフト」は、パソコンを使う上で、なくてはならない存在です。

このようなオンラインソフトは、作者自身が必要とするソフトを開発し、それを無償で公開している場合が少なくありません。それが、近ごろオープンソースになり、オープンソースプロジェクトとして、有志による開発に移行するケースが増えてきました。

そこで、このような「定番オンラインソフトのオープンソース化」事例をいくつか紹介していきます。

まずは、ネット経由のファイル転送ソフトの決定版「FFFTP」。Webサイトを立ち上げるとき、サーバーへファイルを転送するといった場面で、よく使われています。

1997年に曽田純(Sota)氏が開発・公開したもので、2002年には、オンラインソフトウェア大賞を受賞するなど、人気を集めました。2008年には、曽田氏によるサポートが中断されていましたが、不正プログラムがFFFTPを悪用する例が増えており、断続的にアップデートが行われてきました。

FFFTPのソースコードは、もともと修正BSDライセンスで公開されていましたが、2011年に曽田氏がFFFTPの開発終了を宣言。開発は、有志によりSourceForge.JP上で継続することになったのです。


MySQLのライセンスに関する素晴らしすぎる解説

第4回大阪MySQL勉強会資料として、石井氏(twitter ID:@h141gm)がMySQLライセンスについて解説しています。2013年5月に公開されて、6月にアップデートされました。

対象者は、MySQL の導入でライセンスが不安な人、MySQLを使用するアプリの作成者。MySQLの技術的なレベルで初心者の人向けだそうです。

著作権やソフトウェアライセンスについても丁寧に解説してあって、私も良く知らないことや、よく分かってないことがたくさん書いてあって大変勉強になりました。


オープンソースDBのライセンス変更に関するいろいろ

Database

オープンソースのリレーショナルデータベース管理システムについて、ここしばらくおきていたライセンスに関する事柄を記録しておきます。どちらも、オラクルが関わっているんだよなー。

MySQLのほうは、世界でもっとも普及している、オープンソース データベースとうたっていまして、Webアプリケーションを作るときの土台となるオープンソースソフトウェアの定番の組み合わせの1要素です。OSのLinux、WebサーバーのApache、DBのMySQL、スクリプト言語のPHPという4つの頭文字をとって「LAMP」(Wikipedia)というコトバが生まれるくらいですが、それにしてもいろいろな経緯から、MySQLを商用DBベンダーであるオラクルが買収。以来、なにかつーと話題になることに(w)。

Berkeley DBのほうは、”アプリケーション組み込み型のデータベースライブラリである。現在はオラクルの製品であり、またオープンソースとして公開されて”います(Wikipedia)。このBerkeley DBを
、元のSleepycat Licenseから、AGPLに変更したそうです。Sleepycat Licenseは、コピーレフト条項をもたず修正BSDライセンスと同等な比較的ゆるいオープンソースライセンスなのに対して、AGPLはコピーレフト条項をもつ比較的きびしいライセンスなので、なんというかオラクルらしくない行動に見えます(w)。

今後の動向が楽しみです。


ハッピーバースデートゥーユーの著作権

Birthday Cake

以前に紹介したと思っていたけど、見つからないので書いておきましょう。

世界で一番歌われる歌としてギネスブックにも載っている、ご存知「ハッピーバースデートゥーユー」 (Happy Birthday to You)は、アメリカ人のヒル姉妹(姉 Mildred J. Hill と妹 Patty Smith Hill)が1893年に作詞・作曲した「Good Morning to All」の替え歌なんだそうです。

日本では、英語詞は1999年(平成11年)5月22日で、メロディは2007年(平成19年)5月22日で著作権が切れています(丘灯至夫による日本語歌詞は、2059年まで存続)。そして、なんとアメリカでは著作権保護期間の延長により、2030年まで著作権が存続するんだそうです。

現在では、ワーナーブラザーズがアメリカでの著作権を持っており、毎年およそ200万ドル (約1億9000万円) の使用料が支払われているんだとか(アメリカで裁判の判決が出た)。

日本での著作権は切れていますし、家庭内などでの個人的な利用は、もちろん制限されていないと思います。

PS.


オープンソースライセンス文書を自動生成する3つの方法

Generators inside the Hoover Dam

自作のソフトウェアをOSSとして公開するとき、けっこう面倒なのがライセンス文書の用意です。そこで、ライセンス文書を自動生成する方法が公開されました。Moongiftに解説が載っていますが、コマンドラインツールみたいですね。

ぐぐってみたら、オープンソースだけではないけれど、ライセンスジェネレータというWebサービスもありました。必要事項を入力すると、ライセンス文書を生成してくれます。

さらに、意地悪MITライセンスのgeneratorなんてものもありました。これは、ほとんどMITライセンスだけど、特定の個人だけ利用禁止とするMITライセンスです。

自分のソフトウェアをオープンソースにするときは、まずは、ほかのOSSがどんなふうにライセンスを設定しているか、調べてみるのがいいと思います。ライセンス文書をどこにおいているかとかね。OSSのソースコードを読んだことがある人なら、目にしているはずなんだけど、自分でやろうとすると、けっこう見落としがちなポイントもあったりするので。


文化庁、クリエイティブ・コモンズを推進

Magazine St Carnival 2013 Mid City Mr Bingle

文化庁は、2011年度から著作権の意思表示の仕組みの在り方について調査研究を実施。その調査結果を踏まえて、今後は国際的に普及が進むクリエイティブ・コモンズを推進していくことを発表しました。

これは、先日開催された「第8回コンテンツ流通促進シンポジウム『著作物利用の公開利用ルールの未来』」で示されたものです。

自由利用マークは、クリエイティブ・コモンズと同時期にスタートしていました。用途が教育用などに限定されており、わたしは、使いにくいと感じていました。グローバルなデファクトスタンダードに、ローカル規格が駆逐されていく事例としても、面白いかもしれませんね。


OSSライセンスの尊守条件をどのように確実に実行するか?

By snap,snap

経済産業省の外郭団体である独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)の国際標準化センター
リーガルワーキンググループが、「OSS ライセンス遵守活動のソフトウェアライフサイクルプロセスへの組込み」という資料を公開しました。これは、ソフトウェア開発プロセスの中で、OSSライセンスの尊守条件をどのように確実に実行していけばよいか、を解説したものです。

システムや製品・サービスを開発する上でOSSを利用する際、実際にどのようにライセンス義務を履行すればよいのかという本質的な課題に正面から取り組み、具体的な開発プロセスを踏まえたOSSライセンスに対する遵守活動を示した。

とくに、ISO/IEC 12207などのは、ソフトウェアライフサイクルプロセスの標準化を踏まえて解説しています。ソフトウェア開発プロセス、なかでもコンプライアンスなどの取り組みは、個々の組織によっても大きく違うところがあるといわれています。そんな中で、特定の組織に依存しない形で、こういったノウハウがまとめられるのは、大きな意味がありそうです。


MeCabのライセンス変更事例

Seaweed Attack!! By seanmcgrath CC BY 2.0

オープンソースライセンスは、条件がそろえば変更することができます。そのひとつが、著作権者(の全員)が同意した場合。古い事例ですが、MeCabの例を紹介しましょう。

MeCab: Yet Another Part-of-Speech and Morphological Analyzerは 京都大学情報学研究科と日本電信電話株式会社コミュニケーション科学基礎研究所の共同研究ユニットプロジェクトを通じて開発されたオープンソース形態素解析エンジン。言語・辞書・コーパスに依存しないよう汎用的に設計されています。

形態素解析とは、たとえば「日本テレビ東京」といった文字列を「日本」「テレビ」「東京」といった人間にとって意味のある文字要素に分割するツール。日本語変換ツールや、Webサイトの文章解析などに利用されます。

このMeCabは、2006年7月リリースのバージョン0.93から、ライセンスをLGPLからBSD,LGPL,GPLのトリプルライセンスに変更されました。これは、アップルをはじめとする複数の方から要請を受けてのことだという。その結果、iPhoneやMac OS Xなどにも利用されているそうです。

その後、アップルがiPhoneなどで、アプリケーションを配布/販売するのAppStoreがクローズドな方向に転換したとき、MeCabの開発者から、ちょっと批判的なコメントが出ました。

まあ、アップルの方針転換で、MeCab自体がクローズドになってしまったわけではありませんし。いまでも、アップルは自社に役立つオープンソースソフトウェアの開発/支援をしていたりするのですが・・・。


フォトショのソースコードが公開(ただし、Ver1.0.1)

Canora Photo

歴史的遺産として、フォトショップ ver1.0.1のソースコードが公開されました。オープンソースではなく、「COMPUTER HISTORY MUSEUM SOFTWARE LICENSE AGREEMENT」で公開されています。

Adobe Photoshop – Wikipediaによると、

1987年、当時ミシガン大学の学生であったトーマス・ノールが Macintosh Plus 向けにグレースケールの画像を扱うソフトウェアを開発した。これに惹かれたインダストリアル・ライト&マジックの画像編集部門の社員であり、トーマスの弟でもあるジョン・ノールが開発に参加し、ImagePro として完成させた。後にこれをアップルコンピュータとアドビの社員に見せ、1988年9月にアドビがライセンスと販売権の取得を決定し[1]、1990年に最初のバージョンである Photoshop 1.0 が発売された。

ということだそうです。

当時は、Macは白黒だったんですよね。今となっては、同様の機能をもったオンラインソフト/オープンソースソフトウェアはたくさんありますが、たしかに歴史的な存在です。ちなみに、インダストリアル・ライト&マジック – Wikipedia(ILM)は、ルーカスフィルムの特撮部門で、スターウォーズやインディ・ジョーンズなどの特殊撮影を手がけていることで有名です。

ライセンスは、ざっとながめた感じだと、改変可・再配布不可みたいです。


AGPL3の解説とSaaSの自由

Rich and Poor Serving Inequality by epSos.de CC BY 2.0

GNUプロジェクトのWebサイトにAGPL3の簡単な解説(の日本語訳)が掲載されました。

AGPL3は、GPL系ライセンスのひとつです。AGPLの役割は、ネット時代に対応したもので、この解説では、そのあたりを分かりやすく解説しています。AGPL3の詳細は、こちら。

さて、冒頭の解説文では、SaaS利用の問題はAGPL3では解決されないと説明しています。自分のデータが、どのようにサーバーでコントロールされるか分からないからです。リチャード・ストールマンは、このあたりの危険性について、以前から警告しています。

ソフトウェアライセンスは、あくまでソフトウェアの利用条件であり、Webサービスの運用規約ではありませんから、これは至極当たり前の話です。とはいえ、フリーソフトウェアの考え方は運用規約をどのように変えるのでしょうか。